996GT3カップカーに試乗
今回、ある方のご好意で、とても貴重な機会を頂きました。996GT3カップカー、現実的に所有可能な996のレーシングマシン。すさまじいほどの威圧感を放つカップカーのステアリングを握り、わずかな時間でしたが公道を走らせてみました。
これまでにも何度か996GT3カップカーを見る機会はありました。でも「見ているだけ」と「実際に乗る」のとでは受ける印象が全く違いました。僕は、目にする機会の多さゆえに、996GT3カップカーが純粋なレーシングカーであることを忘れていたようです。
ドライバーの操作に対してクイックかつダイレクトな動きをみせ、わずかなアクセルの動きに鋭く反応するエンジン、ノーマルGT3より200kg軽いボディは全ての動きを軽快に感じさせます。
しかし、一切の快適性から見放された存在でもありました。内装が全くなく鉄板剥き出しの車内には、ロールゲージが所狭しと張り巡らされ、極めて軽いドアの代わりにドライバーを守るサイド
バーが、コクピットへの侵入を困難なものとしています。雨の日に濡れた靴で乗り込もうと試みるなら、足を踏ん張ることも難しそうです。一度エンジンをスタートさせればエンジンとミッションが発生するノイズでコクピットは満たされ、ダイレクトな動きの代償として常に激しい振動にドライバーは晒されています。オーディオやエアコンといった装備はもちろんなく、ウインドウすらほとんど風を導かない小窓がかろうじて開くといったモノです。996GT3カップカーは、サーキットで生計を立てる人間達の過酷な仕事場以外の何物でもありませんでした。
僕は996GT3カップカーをなめていたようです。SタイヤでもFSWを1分50秒前後で周回する速さ。その速さを得る為にはどれだけ運動性能に対して純粋である必要があるのか。思い知らされました。
圧倒的な速さを得る代わりに、必要最低限の快適性すら差し出す覚悟がなければ、996GT3カップカーをサーキット遊びに使うことは難しいと感じました。
996GT3カップカーは純粋なレーシングカー以外の何物でもなかったのです。
by minamitsubame
| 2008-05-23 21:39
| Porsche