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カテゴリ:Fiction( 6 )

W・A・N・G・A・N

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マットゴールドに少しグレーを混ぜて、後から艶を出したような色。
何とも表現に困るその色は、「チタニウムグレー」という名称らしい。
「ミレニアムジェイド」だか「シリカブレス」だかもそうだったが、
微妙な色合いのメタリックカラーがGTRには良く似合うと思う。

とは言っても、いつまでも目の前を走られるのは癇に障るものだ。
東京港トンネル、大井、空港北トンネル、空港中央。
伝統的な丸目四灯は、外側しか点灯しないのが残念だが、もう十分見た。
場所は湾岸線西行き川崎浮島JCT。今度はフロントを見せてもらおうか。

バックミラー越しに、ね。

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by minamitsubame | 2009-07-26 22:02 | Fiction

翳り

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「終わりにしよう」
男は低く静かに言葉にした。
「すまない。疲れてしまったんだ」
瞳を暗く濁らせ、痩けた頬に無精髭を纏った男は、
力無くその場に立ち尽くした。
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by minamitsubame | 2009-06-24 20:50 | Fiction

men and woman

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数分前まで悔し涙を流していたことは明らかだった。目を真っ赤に腫らし、下唇を噛みながら口を真一文字に結んで、女が部屋に入って来た。今にも泣き崩れそうな表情の中に、怒りに燃える瞳だけが赤く光る。部屋にいる誰にも視線を合わせず席に着いた。女が遅れて出現したことで、終盤に差し掛かっていた会議は凍りつき、不毛な結論しか選び得ない憂鬱な議題に一層暗い影を落とした。女が部屋にいるメンバー全員、特に上座に位置する二人の男を敵視していることは明らかだった。

トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル・・・。

受話器の向こうで虚しく響く呼び出し音が、男達の行く手に厚い暗雲が垂れ込めたことを予感させた。会議の始まるわずか30分前に、女がボスに呼ばれたのを上座に位置する二人の男達は知っていた。この戦法が内部分裂を誘発させたい時にボスが好む常套手段であり、内部分裂を起こすことで二人により一層の圧力をかける為に、ボスが最適な人選を行ったことを二人は悟った。

予測通り、会議は最後の場面で踊り、険悪なムードを残したまま終了した。

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by minamitsubame | 2009-06-20 23:50 | Fiction

風船と二人の少年

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漆黒のメルセデスから、重たそうにドアを開けて、二人の少年が降りてきた。その手には黄色の紐が握られ、その先にはそれぞれピンクとブルーの風船が付いている。空気より軽い気体が詰められている風船達は、黄色い紐がなければ空高く飛んで行ってしまいそうだった。少年達はいつもなら重たいドアを体全体で閉めようとするのに、そんなことにはずっと前から関心がなかったかのように、ドアを開けっ放しにしたままメルセデスから離れていく。空へ向かって自由になろうとする風船に夢中なのだ。

パン!不意に空気が弾ける音がして、ブルーの風船が姿を消した。どうやら少年が気を緩めた瞬間に笹の葉に触れてしまったようだ。少年の手には、主人を失った黄色い紐だけが取り残されている。風船を失った少年は困惑していた。「僕の風船、どこにいっちゃったの?」、何が起こったのか理解できない少年は、大粒の涙を目に浮かべながら、右手に寂しく取り残された黄色い紐に問いかける。「やっと一緒に遊べると思ったのに」、肩を落とし意気消沈してしまった少年に、ピンクの風船を持った少年が言葉をかける。「あとで僕の風船を貸してあげるから、そんなにがっかりしないで」

その日、空は抜けるような青さに染まっていたが、やや強めの風が木々を揺らしていた。ピンクの風船を持った少年は、風と黄色い紐に弄ばれる風船の動きに夢中になってしまった。風船を失って、とぼとぼ歩く少年のことなどまるで気にもかけず、黄色い紐を振り回して喜んでいる。右手の先で浮いたり沈んだりするピンクの風船に気を取られ、少年には誰の声も届かなかった。「僕も遊びたかったな」、ブルーの風船を失った少年のことなど意識の片隅にも残されていなかっただろう。しかし、ピンクの風船も少年の手から失われる時が来てしまった。

家までもう少しというところで、二人の少年の明暗を見かねた風が、ピンクの風船を黄色い紐ごと拾い上げる。「あ〜っ!僕の風船!」、風に拾い上げられた黄色い紐は、少年の手の中からするりと抜け、ピンクの風船と共に空高く舞い上がる。少年は反射的に手を伸ばし、精一杯高く飛び上がってみたが、風は彼の手より先にピンクの風船を青い空に舞い上げてしまった。「あ〜っ!あ〜っ!帰ってきて!」、少年には空高く舞い上がるピンクの風船を、ただ見上げているしかなかった。少年の手を逃れ、自由になった風船は更に空高く飛び去って行く。皮肉なことに、青い空に舞い上がるピンクの風船は色鮮やかに見えた。「なんで!なんで〜!」、少年は泣きわめきながら、それでもただ、森の上を越えて飛んで行く風船を、その姿が見えなくなるまで目で追いかけるしかなかった。それは、一瞬にして風船を失った少年よりも、遥かに辛い体験だったに違いない。

マカロニ市場で少年達が手にした二つの風船は、少年達に貴重な経験を残してその姿を消した。
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by minamitsubame | 2009-04-22 00:12 | Fiction

Sympathy For The Devil

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写真はpolyrhythmさんのブログ「OFF@TYO」から拝借しました。

ビルの合間を縫うように造られた小道の脇で、「彼」は静かに主の帰りを待っていた。見た目に派手さは感じられないが、「彼」はある種の空気を身にまとい、自らが普通とは程遠い世界の住人であることを言葉無く主張する。不意にビルの扉が開いて、「彼」の主が足早に近付いてきた。いつもの儀式を優雅にこなし、指定席に滑り込む。その場所は、海中深く行動する潜水艦の艦橋のように、外界の喧噪から見事に遮断されている。主は軽く目を閉じて、皮の匂いにデコレートされた空気を胸一杯に吸い込む。瞬きの音を身近に感じる極めて静粛な空間の中に、よもや、視界をも捩じ曲げる爆発的な力を持つ舶来の野獣が潜むとは、誰も思うまい。

「おい、そろそろ目を醒ましてくれないか?」

トン、と軽く合図を送ると、「彼」は低い唸り声をあげて瞬時に目を覚ます。喉を鳴らしながら主に戯れつく野獣は、まだその力を外界に曝そうとしない。主は、体を包み込むように受け止める程良い硬さのシートに身を沈め、重く低く響く野獣の唸り声に身を任せている。リズミカルに響く唸り声とその心地良い響きに背を預ける時間は、主にのみ許された至福の一時だ。目前に広がる柔らかい光の海に包まれながら、抑え気味に流れる甘い女の歌声に耳を傾ける。

「時間か・・・」

主にとって、湖底深く沈みかける意識に鞭打って、眠りの神ヒュプノスの誘いに抗うのは、さほど難しい行為ではない。「彼」の求めに応じて軽く手綱を引くだけで、容易にヒュプノスの誘惑を退けられるからだ。野獣の軽い咆哮と共にやや強い振動が背筋に伝わる。主は左肘を付き、手背で軽く顎を支えながら手綱を取る。次の瞬間、野獣のしなやかな肉体は、周囲の空気を振るわせながら動き出し、主の無遠慮な動作に瞬時に応じようとする。「彼」は、穏やかな外見からは想像もつかない圧倒的な力を路面に叩き付け、図太い排気音とスキール音をその場に置き去りにする。

焼けた燃料の臭いと、溶けたゴムの臭いだけを、その場に残して。
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by minamitsubame | 2009-04-12 20:00 | Fiction

氷姫

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写真はMelody63さんのブログ、「春を探しに」から拝借しました。

(痛みを感じるような寒さとダイヤモンドダストが舞う吹雪の中、氷姫は全てを凍りつかせるような妖しく圧倒的な魔力を発散させながら一本の小枝のように立っていた。銀色に光り輝く氷姫の長い髪が吹雪に弄ばれ、その素顔を覆い隠している。しかし、その奥に見える美しい素顔には表情がなく、私を見据える青い瞳には凍てつく氷の炎がちらついている。ついに私は氷姫の素顔を見てしまったのだ!)

氷姫「わたしは氷姫。わたしの姿だけを遠目に見て、それで満足しておれば良かったものを」
氷姫「しかし!お前はわたしの素顔を見てしまった!見てしまったのだよ」
氷姫「わたしの素顔を見た者の運命は、お前も知らぬはずはないだろう」
氷姫「そら、お前の足元が凍り始めたよ。お前はもうわたしから逃れることはできないよ」

氷姫さま、ご無礼をお許し下さい。
でも、敢えて申し上げるなら、あなたの美しさをこの目に焼き付けておきたかっただけなのです。
私のような小者に、あなたと共に生きるだけの力はありません。

氷姫「お前は気付いておらぬのか?わたしの素顔を見に来ることがどのような行為なのかに」
氷姫「わたしの存在を知り、その素顔まで見ようと試みる者の運命。それは・・・」
氷姫「わたしと共に生きるか、永久に溶けることのない氷の中に閉じ込められるか」
氷姫「その二つに一つしかないと、よもや知らなかったとは言うまい!」

しかし、氷姫さま。
私のような小者に、あなたと共に生きる資格などあるとは思えません。
どうかこのまま私が元の世界に戻ることをお許し下さい。

氷姫「そのまま戻りたいと申すか。ではなぜお前はわたしの素顔を確かめようとしたのか」
氷姫「わたしの素顔を見て生きて戻った者がおらぬことなど、お前も知っていただろう」
氷姫「さあ、お前の腰まで凍ったよ。どちらを選ぶか決めるのだ!」

しかし、氷姫さま!
私は氷漬けにはなりたくありません。
でも、あなたと共に生きて行くこともできそうにありません。
・・・私には無理です!

氷姫「お前はわたしの素顔を見たのだよ?それでも自分の気持ちに正直になれないというのかい?」
氷姫「であれば仕方あるまい。わたしの素顔がせめてもの手向けとなろう」
氷姫「わたしの幻影を胸に抱いたまま、永遠に動けぬ氷の柱としてそこに立ち続けるが良い」

(どれほどの時間が経ったのだろう。その間も氷姫の青い瞳は私を射貫き続け、私の自由を奪う氷は私の胸を越え喉に届こうとしていた。胸の動きが氷に押さえ付けられ、急速にひどくなる呼吸苦に意識さえ朦朧となりながら、私は氷姫の素顔を見続けた。視界に映る氷姫の美しくも激しい素顔が涙で滲んで見える。それでも私は懸命に空気を吸い、意思を伝える為に息を吐き、声を作った。)

・・・分かりました、氷姫さま。
私はあなたに憧れてここに来たのです。
覚悟を決めます。私をあなたの世界にお連れ下さい!

氷姫「・・・いいでしょう」
氷姫「では、わたしと共に永遠の氷河の国へ参ろう」

(それまで氷姫の瞳に映っていた凍てつく氷の炎はなりを潜め、代わりに慈愛が瞳を満たしていた。それまで無表情だった氷姫が、微笑みを浮かべている。その美しさは先ほどまでの比ではなく、ダヴィンチの微笑をたたえたその横顔は、神の慈しみそのものに見える。氷姫を受け入れた者にしか見ることを許されぬ微笑なのだろう。私は優しく差し出された手にそっと触れてみた。凍りつくように冷たい手の表面から、ほのかな温かさと圧倒的な力を感じずにはいられない。私の動きを封じる喉まで届いていた氷は跡形もなく消え失せ、私は再び自由になった。私は氷姫の手を取り、共に歩み始める。その先に何があるのか、それは氷姫の世界に行けば分かることだろう。)
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by minamitsubame | 2009-04-12 12:33 | Fiction