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men and woman

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数分前まで悔し涙を流していたことは明らかだった。目を真っ赤に腫らし、下唇を噛みながら口を真一文字に結んで、女が部屋に入って来た。今にも泣き崩れそうな表情の中に、怒りに燃える瞳だけが赤く光る。部屋にいる誰にも視線を合わせず席に着いた。女が遅れて出現したことで、終盤に差し掛かっていた会議は凍りつき、不毛な結論しか選び得ない憂鬱な議題に一層暗い影を落とした。女が部屋にいるメンバー全員、特に上座に位置する二人の男を敵視していることは明らかだった。

トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル・・・。

受話器の向こうで虚しく響く呼び出し音が、男達の行く手に厚い暗雲が垂れ込めたことを予感させた。会議の始まるわずか30分前に、女がボスに呼ばれたのを上座に位置する二人の男達は知っていた。この戦法が内部分裂を誘発させたい時にボスが好む常套手段であり、内部分裂を起こすことで二人により一層の圧力をかける為に、ボスが最適な人選を行ったことを二人は悟った。

予測通り、会議は最後の場面で踊り、険悪なムードを残したまま終了した。



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「お二人とも、私の敵であることが良く分かりました」

メールで届いた一言が、ボスの言葉に激しく動揺している女の心を浮き彫りにした。男達は、自らの持ち場を独りで守る女が、金を最優先するボスによって著しく蔑まされたことを知った。ボスは動揺した心に付け込み、男達が女を陥れようとしているという嘘の情報を吹き込んだに違いなかった。男達にとってだけでなく、職場で働く者全てにとって、もちろん女にとっても、共通の敵はボスただ一人のはずであった。その事実を忘れ、男達に敵意を剥き出しにする女の姿を見て、男達は極度の疲労を感じずにはいられなかった。

一年半前にボスが切ったカードが、職場を混乱に陥れた。要職にあった者が二人去り、男達は職場を維持する為に、同じ職場で苦労を共にする仲間の為に、相当な苦労と無理を重ねていた。すでに精神的にも体力的にも限界が近付いている。男達が倒れれば職場が危機的状態に陥ることは明白で、それを回避することで男達は精一杯だった。にも関わらず、ボスは男達を最も疲れさせるカードを更に一枚切り、今のところ、それは男達を有効に追いつめている。男達の疲労は極限状態にあるが、それでもそれを理由に女を切り捨てるわけにはいかない。

男達にとって、女は共に闘ってきた、かけがいのない仲間なのだ。
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by minamitsubame | 2009-06-20 23:50 | Fiction